vol.001「蘭丸」小林 正幸さん 「新聞見て買いに来てくださったんです、わざわざ」

贈答用や冠婚葬祭に購入される胡蝶蘭は、一番需要が高まるのが3月~4月。新型コロナで行事やお祝いの自粛が続き、出荷に大きな影響を受けました。
県内に胡蝶蘭を生産する農家は2軒。そのひとつ、加古川市の「蘭丸」代表の小林さんを訪ねました。温室におじゃますると、風が通って案外、気持ちがいい。白い蘭がずらっと並ぶのはなかなかの光景だと思いましたが、小林さんによると「本来よりずっと数が少ないんですよ…」とのこと。

これからが書き入れ時だった・・

小林 需要がピークになるのは、年度変わりの時期なんです。個人で購入する方も、「社長が代わる」「事務所が移転、オープンする」、そういう時に、学校関係や法人さんの購入がありますね。単価も上がります。年度変わりで売って、売れない時期は堪え忍ぶようなかたちで。3~4月の売り上げが前年より上がるよう栽培してましたんで、打撃が大きかったですね。
清水 どれくらいの打撃でしたか?
小林 売り上げは、これまでにない落ち込みでした。例年なら、夏以降も一定量売れるので、本来であれば一定数を栽培し続けるんですけど、今年は輸入する苗のうち一部の苗の仕入れを抑えました。うちは比較的小さい温室ですけど、大規模にされている生産者は、苗も年間契約で仕入れてる。そういう所は、ところてん方式で「仕入れて出荷して」っていう感じなので、市場に出し続けておられますよね。でも、需要がないので、二束三文だったり、ひどい時は「『市場で値がつかんから取りに来てくれ』って言われた」という話もあるみたいです。
清水 今ある胡蝶蘭は、例えば来年春になっても商品価値は変わらないんですか?
小林 通常より1年長く育てることで花の品質(大きさや数)は逆によくなることもあります。ただ、いくら品質がよくても需要の波に乗れなければ、市場価値としては低くなると思います。

 

真っ先に考えたのはパートさんのこと

清水 こういう打撃はこれまでにもあったんですか。
小林 はい、1回経験あるのは、東日本大震災の時です。3月11日だったですよね、その時も。自粛ムードで単価がつかなかったりしました。その時は、「1年耐えれば、元に戻るかな」と思ってましたけど、今回はこの先どうなるか分からない。おそるおそるやっていく感じですね。
清水 新型コロナで事態が深刻になっていって、まず何を考えました?
小林 パートさんのことです。従業員が1人とパートさん3人いるんですけど、みなさん、やりがいを持って働いてくれてますし、花を仕立てるにも一朝一夕では身につかない技術ももってますし、何より今まで一緒にやってきた仲間なので、やめてもらいたくないっていうのもあります。でも今、花が少ないのでね。今のハウス1棟分だと、やろうと思えば、自分ひとりでも管理できるんですけど、あえてそれはしてなくて。以前のように通常通り勤務してもらう…とはいかないですけど、日数を減らしてでも出てきてもらって普段やってもらってない作業をお願いいしたりしてます。不安なく働いてもらえることを考えなあかんと思ってますけど、早々にはアイデアが浮かばないですね。

温度・湿度・日照などの管理が重要。管理を間違うと花びらに斑点がついたりして商品価値が下がる。

適温は25度前後。夏場の冷房にかかる電気代は月に30万円ほどになることも。

新聞見て買いに来てくださったんです、わざわざ

清水 これからの道筋は?
小林 仮定ですけど、秋から再起をかけていきたいなと。市場中心に出荷はしていく予定ですけど、同時に法人さんと直接のお取引とかをめざして奮起していきたいです。一番の目標は春。そこで復活したいです。
清水 直接の取り引きのために、なにか始めたことはありますか。
小林 ネット購入できるHPを作ったりとか、でも、自分はこの辺、疎いのでこれから勉強せなあかんのですけど。あと、法人さんに出向いて営業かけたいとは思うところではありますけど、今の時期、なかなかそんなに訪問しにくいんで。
清水 新聞で「売れていない」って取り上げられていましたよね。反響はありましたか?
小林 翌日からお電話があって、来園いただいきました。10人くらいご購入があって、加古川市内、姫路、神戸市西区から来ていただいたりしました。「まだまだお花が好きな人がいてはるんやな」というのは実感しました。
清水 いろいろお話、されたんですよね?
小林 「大変ですよね」とかそういうお話を。来ていただいて、なんていうんでしょう、励ましの言葉じゃないですけど、買っていただくことで……ちょっと、思い出したら、涙が出てきそうになりました。「もうちょっとがんばろうかな」と、そういう気持ちになりましたね。お客さん大切にせなあかんなと思いました。

清水 こういう緊急事態が起こって気づいたことはありますか?
小林 そうですね、未然にリスク管理するのは無理なのかなと思います。不測のことが起こって、それにどうスピーディに対応していくかを考えていく方がいいのかな。加古川農業改良普及センターの普及指導員さんに手伝ってもらうまでは、HPのことも、うまいこと動けなかったです。「落ち着くまでは動けんやろな」という思い込みがありました。これから販売先を広げていくということもありますが、他の生産者さんとの差別化をはかれないかと、胡蝶蘭に色をつけてみたり、試行錯誤しながら、いろいろチャレンジしていこうと思っています。

清水 今、「ありがとう」と言いたい相手はいますか。
小林 来ていただいたお客さんです。
新聞を読んですぐに電話をしてくださった方も。ご縁を大切にせなアカンなと思います。

 

――   +プラス情報  加古川農業改良普及センター青木さんより ――
花のなかでも家庭向けの花壇苗は影響が比較的少なく、イベント・贈答向けの胡蝶蘭は特に新型コロナの影響が大きかったんです。そこで、小林さんは、ご家庭でも飾れるよう花が1本立ての商品を製作。誕生日や還暦など大きなお祝い用に買ってもらえたらと思います。野菜とちがい、お花は産地表示がないですが、地元産の花であれば配送での衝撃は少なく、鮮度も良いので、花も地産地消が広がっていけばと思います。

 

「蘭丸」
2007年から胡蝶蘭を生産。年間約2万株を出荷。
兵庫県加古川市八幡町下村1067
Tel 090-7757-3956
Fax 079-428-2510
HP https://ranmaruocd.thebase.in/

 

取材 兵庫県広報専門員 清水奈緒美

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