社会的責任以外の何か。『突撃、隣の県職員 ー 特別ver,』vol.018

兵庫県広報専門員の清水奈緒美が、新型コロナウイルス感染症の宿泊療養施設を担当する復興支援課の藤本和久さんにお話を伺った。

陽性患者さんの療養場所として病院ともうひとつ、ホテル等の宿泊施設があるのは、ご存知だろう。この宿泊療養施設の整備を担当したのが“復興支援課”と知った時は、ほんの0.5秒ほど「意外な課が‥」と思ったが、そこは重要ではない。前回の医務課インタビューのなかで、「病床が埋まる前に宿泊の受け入れが間に合いまして」と話題にあがったこともあり、今回、宿泊療養施設について藤本さんに聞いた。

 

事の始まりは4月初旬

全国的に病床数がひっ迫し、「ホテル等を活用した宿泊療養をすること」という国の方針が出された。「それまでは、寄附されるマスクや消毒液の窓口になったり、必要物資を三木の広域防災センターに移したりしていたんですが、その方針を受け、急きょ担当に。“ホテルを療養場所に”というのは、全く初めてのことだったので、『何を例にしたらいいのか』という戸惑いと、『果たしてホテル側に協力してもらえるのか』という不安がありました」。

 

しかし、不安は一蹴。続々と申し出が。

「実際は、こちらからお願いする前から、『うちのホテルで何かできることありませんか』というお電話があったんです。『どうしようかな』と思うより先に、『数部屋しかないですけど』『うちも使ってください』、どんどんそんな話が入ってきたので、すごく心強かったですね」と藤本さん。受け入れを申し出る施設は10を超えていた。そして、「入浴設備が部屋にあるか」「食事の提供はできるか」といった施設環境の確認をすすめ、4月13日にホテルリブマックス姫路市役所前が、17日にホテルヒューイット甲子園ウエスト棟が受け入れ開始となった。「最終的には『近くに民家や商業施設がないか』とか、『運営にホテルスタッフの協力が得られるか』といった基準で決定しました。受け入れ開始以降も手をあげてくれるホテルは増え、お断りをしないといけないのが申し訳ないくらいです」。

 

「近隣からの苦言」「お弁当のおかず」。やって初めて分かることも。

施設ごとに、全体をまとめる統括(県職員)、後方支援(県職員)、保健師・看護師を24時間常駐で置き、医師はオンコールで対応。リネン類の管理や食事の手配はホテルスタッフが行うとのことだ。施設内で使うマニュアルや宿泊患者さんへの案内様式などを見せてもらうと、「すごい。細かい‥」。施設内のゾーニングはもちろん、「誰がどの階段を通るか」といった感染防止のための取り決めも徹底されている。藤本さんによれば「やりながら考える、やってから考えたことも…」といった同時進行っぷりだったそうだ。

感染領域と非感染領域とをきっちりゾーニング。このビニールカーテンは職員の手づくりだそう。

看護スタッフが電話で患者の健康状態を確認する。

ホテル療養といっても、外出は許可されず、1日2回の検温や健康観察など病院での過ごし方と同様に過ごしてもらう。ただし、ネットショッピングや差し入れは可能にしていることのこと。実際、運営してみて出てくる問題もあるそうで、「『窓が開いているが、大丈夫か』と近くの住民から言われたりしました。『空気感染しないという医師の見解のもと換気を行っているので』と説明し、納得してもらいましたね。ほかに、3食お弁当を注文するんですが、人によっては『足りない』『油ものが多い』とご意見がありましたので、1週間ごとにお弁当屋さんを変えるとか工夫をしているところです。やってみて、ただ事務的に進めるだけでなくって、『療養者目線で考えないといけないな』と感じましたね」。

 

社会的責任以外の何か

今回の宿泊療養にあたっては、建物の一部を使用するのではなく、一棟を借り上げるそうだ。その借上料は支払われるものの、ホテル側は覚悟しないといけないこともあるだろう。「宿泊療養が解かれた時には当然、全棟まるごと消毒してお返しするんですが、きっと風評被害はゼロではないでしょうから‥それも考えたうえで手を挙げてくださってるんですよね」と藤本さんは話す。そういった協力企業はほかにも。「ホテルだけではなくって、災害時の応援協定を結んでいる企業、例えばコカ・コーラさんは療養されている方へ飲み物の提供をしてくださったり、あと、患者さんが使ったリネン類ってクリーニングを受けていただける業者さんが見つからなくて、『感染性廃棄物』として廃棄せざるを得ないんですが、IKEAさんからリネン類を提供してもらったりしています。企業の方は『社会的責任ですから』とおっしゃってくれていますけど、ほんとうにありがたい限りです。“何かできることはないですか”。この言葉には、震災で培われたボランティア精神と通ずるものを感じますね」。

「宿泊療養施設の整備」。言葉にすると無機質なこの9文字の背景には、かくもたくさんの方々の申し出があった。人のあたたかさがあった。余談だが、全国的に見て、この宿泊療養施設の整備を、医療・福祉の課ではなく“災害支援”の課が担当しているのは珍しいらしい。そういえば‥。0.5秒で消えた復興支援課の意外性がここで急浮上した。だからと言って、それが何かを示しているわけではないが、防災部局が当初からのスタメンであるのは、“兵庫らしい”のだろうし、有事のための備えや、ヒト・モノが人知れず私たちの底を支えているにはちがいないのだろう。

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