ブラックな求人ポスターをつくった理由。-県職員募集告知の広報

好きだからつきあうか、
つきあってから好きになるか。
これってけっこうな問題だ。
なんの話?
実は、2019年度の兵庫県職員募集告知ポスター・チラシにつかっているキャッチコピーです。
「働く」って実際、どういうことだろう?
兵庫県職員募集の広報をお手伝いすることになったとき(実際に告知をされるのは、兵庫県人事委員会事務局というところ)、まず考えたのは、対象となる大学生のことでした。
私(※広報官の湯川です)は、民間の活動で、大学生の交流拠点運営をしているので、就活する大学生たちにたくさん会っています。
当然ですが「働く」ということに具体的なイメージをもてないことも多い彼らは、つい、アルバイトと同じように、「条件が良くて、楽で、やりがいも与えてくれるところ」を探そうとしてしまうことも少なくありません。
そんな彼らの思いに寄り添う、というか、つけこむように、美辞麗句並べて「いいところだからおいで♥」と言って誘いながら、実際にはハードで「やりがい」なんて感じる余裕もない職場に置かれて、疲れ果てたり限界を超えたりして会社を辞めていく若者を、たくさん見てきました。
そんな、お互いに不幸なミスマッチはやめたい。
これから社会に出る、「働く」ということを初めて知る若者に、ウソをついたり、隠したりするようなことは、絶対にしたくない。
そのことを、まず、いちばんに考えました。
「公務員」って実際、どういう仕事?
私は22歳で社会に出てから22年間、民間で仕事をしてきました。しかも、わりとワイルドな状況で。
大学在学中に友人の学生起業に参加、そこが立ち上げたYahoo! JAPANにスタートから参画、2年で辞めて海外でフリーライター10年。帰国して起業して10年。
そんなワイルド・ライフな私は、「公務員なんて、どうせ楽な仕事で、良い待遇で、お気楽だよね!」と、ずっと思ってました。
でも、自分が公務員として現場に入り、また昨年の大阪北部地震の時など、家族は後回しにしても住民の安全確保のためいちばん危ない仕事を当然のようにこなしていく公務員の姿を目の当たりにして、「ありゃ、こりゃすげー大変な仕事だわ。ようやってはる」と思うようになりました。
その事実は、「外からの目線で見たひと」として、ちゃんと伝えないといけない、と思いました。
もしも以前の私と同じ、「仕事は楽そうだし、待遇もまぁまぁ良さそうだから、公務員っていいよね♪」と思っている学生がいたら、ちがうよ、と言わなきゃいけない。
「やりがい」って、何よ?
そして、「やりがい」問題。
私は自分の経験もあり、民間の事業では、いわゆる「創業支援」を、よくしています。
なぜか。ベストセラーになった『LIFE SHIFT』で書かれているように、人生100年時代を迎えるという現代日本において、企業の”平均寿命”は23.9年(※2018年、東京商工リサーチ)。
起業するかどうかはともかくとして、組織に依存するのではなく、組織と共に自分で事業をつくり運営する力がないと、長い人生、仕事を続けられないと思っているからです。
そしてもうひとつ、日本人の「働き甲斐」がOECD加盟国を対象にしたいくつかの調査でいずれも最下位……という現実が、悲しすぎるからです。
で、「やりがい」は、どうやったら手に入るの?
……知るかいな!
少なくとも、「やりがい」は、誰かが与えてくれるものではない(もしも、誰かが「これが、あなたの『やりがい』だよ」と何かを差し出すとしたら、絶対に詐欺だと思うぞ!)
自分で見出すものだ……「幸せ」とか「希望」と同じで、それは、あなただけのものだから。
最後の質問。
最後に、担当をされる兵庫県人事委員会事務局さんに、伺いました。
どういうひとに、来てほしいですか?
☑ どんなひとでもいいから、とにかくたくさん応募してもらいたい。
☑ 数よりもむしろ、兵庫県を共に変えたいという、熱い思いをもっているひとに来てもらいたい。
すぐに返ってきた答えは、後者でした。
わかりました。そういう思いをもつひとに伝わるポスター・チラシにしましょう。
と、いうことで、こんなメッセージを書きました。
「働く」って実際、どういうことだろう?
これから何十年も働く職場を、どう選んだら良いんだろう?漠然とした不安が、消去法で未来を選ばせそうになる。
安定した職場。それならやっぱり公務員? つまらなさそうだけど。違う、ぜんぜん違う。
548万人の「住民の福祉の増進を図る」のが兵庫県の仕事。
つまり人の数、その幸せの数だけ、サポートをする仕事がある。楽ではない。職種は幅広く、仕事しながら学び続けることも多い。
楽ではない。災害のときは最先端に立つこともある。それでも、やりがいを見出す機会は、少なくない。
「住民を幸せにする」を目的とする職場だから。消去法ではなく、積極的に選んだら良い。
あなたが自分自身の可能性を切り拓いていけそうな職場を。もしもそれが兵庫県だと思ったら、ぜひ、一緒にやろう。
共に、548万人の幸せを本気で考える仲間を、募集します。
真っ黒な背景に、白抜きの文字。
自分に訴えかける何かを感じてハッと立ち止まった方(だけ)が、しっかりと中身を読んでくれればいい。
そんなデザインになっています。
なんと、新聞記事に。
こうして、担当の兵庫県人事委員会事務局と二人三脚で始まった、2019年度の兵庫県職員募集告知。
この広報自体が、新聞記事となりました。
▶「好きだから?それとも…」恋愛みたいな公務員募集広告(2019年5月25日 朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/photo/AS20190523004392.html
素敵な仲間が、集まると良いな。
週2日の兵庫県職員としても、あるいは週7日の兵庫県民としても、心より願っています!