“情報を出す”と“限界まで情報を出す” 『突撃、隣の県職員 ー 特別ver,』vol.019

兵庫県広報専門員の清水奈緒美が、新型コロナウイルス感染症の患者情報の収集・分析を担当する社会福祉課の東秀紀さんにお話を伺った。

日々更新されるコロナウイルスにまつわる数字。患者数、PCR検査数、重症者数…。状況を知り、判断の材料となる大事なものであることは言うまでもない。更新されるのが当たり前になっていて気にしたことがなかったが、保健所や検査機関など各所からの情報を、公の数字やデータにまとめている人が当然いるのだ。

 

まちがったものを出してしまわないか

「3月1日に対策本部ができる前も、HP更新などで関わっていたましたが、疾病対策課の業務がどんどんふくれあがっていって。対策本部が立ち上がり、医療体制は医務課が、医療物資は薬務課が、コールセンターや情報収集は社会福祉課が‥と、分担されていきました」と東さん。東さんが行うのは、患者情報の収集と分析、情報の開示だ。陽性患者数や患者情報(年代、性別、居住地、職業など)、PCR検査数、病床数、重症者数などを更新。患者の年代・地域別の割合や、感染経路不明者の割合、入院期間、10万人あたりの患者数など、さまざまな統計を取る。統計の数はどんどん増え、多い時は20以上を更新していたそうだ。

「とにかく、1日に40以上とか患者数が増えていった時は統計を取る余裕はなく、『15時までの記者発表資料、急げー』という毎日でした。そういう時は、やっぱり間違いが起こってしまうんです。個人名は非公表がゆえ、更新される患者情報や経過が誰のものか紐付けしにくく、『この情報、この患者さんのものではなかった』ということも(※もちろん、判明後に速やかに訂正)。今は対策本部に応援職員が来て、チェック体制もできています。やっぱり、『まちがったものを出してしまわないか』。その怖さは常にありますよね」。

 

自治体による差も

公表している数字は、自治体により異なるという。患者数などの主な数字は現在、どこの自治体も出しているが、細かいところを見ると‥例えば、PCR検査数が累計のみのところもあれば、重傷者数や患者の地域を公表していないところも。『あまり細かく分析し過ぎても』と思う時もありますが、やっぱり数字は大事です。憶測でもの言うのは簡単ですが、『~だろう』『~ちゃうか』ではなく根拠が必要なわけなので。そして、割合よりも絶対数を出すことも大事です。割合は分母を変えると変えられてしまうんですよね」。

 

 

阪神・淡路大震災。当時と重なる点、異なる点

東さんは阪神・淡路大震災の対応も経験しており、当時と重なる点もあるという。「あの時は淡路県民局にいたんですが、発生当日に一宮町役場(現・淡路市役所)へ支援に行ったり、その後も県民局で泊まり込みで対応したりしてました。救援物資が来ると、時間に関係なく、みんなで起きて救援物資や水を運んで…。で、コロナウイルス患者が急増したこの4月は特に、『あれ、もう、こんな時間?』っていう日が続いて、今もあまり思い出せないような感じなんですが。毎日深夜まで、土日なしでもふんばれていたのは、対策本部のみんなも同じように耐えていたからなんです。そこは、阪神・淡路の時と同じですね。当時は被災者も地元の人も行政もみんなで頑張ってましたから」と東さん。一方で、大きく異なる点も。「感染症は目に見えない分、やっかいだなと感じています。地域によっては、患者はまるで犯人扱いされたりしていますよね。人権侵害のようなことが起こっているのは、自然災害とはちがうところです。」

 

“情報を出す”と“限界まで情報を出す”

「コロナウイルス情報の発信にあたっては、当たり前のことですが、出すべきものはちゃんと出す。公務員の仕事には、“1の仕事を2、3…する”のがいいものと、“1の仕事を2ではなく1きっちりやる”べきものがあると思います。情報発信では、不正確なものを出して、それが広がったり、誤った判断につながったりしてはいけないので正確であること、さまざまな情報を整理すること、それから、どうしても出せない個人情報以外、出しうるものは出すことも、1の仕事をきっちりするということだと思います。それが、県民のみなさんの安心につながると思うので」と東さん。

 

自治体発表の数字が国へ、関係機関へ、メディアへ行く。私も、例えば“県内患者が最も増えていた時”、こういった言葉を使う際に、数字を根拠にする。累計ではなく日別の数がすぐに分かり、ありがたい。誰がどの数字を見るか分からないがゆえに、出せる限りの数字を出す、整えておく-当然の仕事と言えば当然の仕事だが、情報の受け手のためにできる限りオープンであろうという姿勢は、絶対的な誠意と言えるのではないだろうか。

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